大型連休の前半、27日~29日の3日間で実施した「ログドラムをつくろう」に参加しました。
このログドラム、一般的になじみの薄いものかと思いますが、シンプルで原初的な形は彫刻のようでもあり(制作中は木彫家気分だった)、木に一本のスリットを空けただけで玄妙な響きが生まれる楽器に変わってしまうのです。そして木の香りがとてもよい!
世界を舞台に活躍している打楽器奏者の加藤訓子さんもログドラムに魅せられた演奏家。
彼女愛用の大きなログドラムは、講師にお迎えした石川理(おさむ)さんが制作したものなのです。
3日間の様子をご紹介しましょう。
会場となったのは、ガラスのピラミッド倉庫です。
丸太の皮をはいだり、切ったり、穴を開けたりの作業は、きれいな室内ではとても行えません。シャッターで開け閉めできる半屋外の倉庫は、格好の作業スペースになりました・・・のはずだったのですが、今年は寒い春で・・・やや辛抱が必要でした。
最初に挨拶をして一日の作業が始まります。手前に写っているのは道具の手斧や木づち。
写真の右側が講師の彫刻家 石川理(おさむ)さんです.
石彫がご専門なのですが、打楽器奏者の加藤訓子さんとの出会いをきっかけに、数年前からログドラムの制作を始め、生まれ故郷の愛知県田原市江比間の生家で制作活動を続けられています。謙虚な、意志の強さを感じるとても素敵な人です。
これは木に開けるスリットの位置を決めているところ。
この写真では、木の皮がほぼ剥けた状態ですが、皮の付いた丸太を手斧で削り、このようなきれいな状態にするのです。慣れない私達には、その作業がほんとうに大変でした。
石川さんは手斧の一振りでスパーッ、スパーッとあっという間に木の皮を剥いていくのですが、私たちは怪我をしないように恐る恐る、ゆっくりゆっくりの作業になります。あまりに真剣に作業に取り組んだせいか、その様子の写真がありません(笑)
そして、開けるスリットの位置を決め、ドリルで一列に穴を開けていきます。
ログドラムの響きや音を決定してしまうスリットの長さや深さは、石川さんの何年にも亘る制作経験、試行錯誤の中で、見つけられてきたものです。
空けるスリットの位置と深さについて説明する石川さん。
ドリルで穴を開けたあとのスリットを仕上げているところ。
写真の方は今回の参加者の最高齢、78才のMさんです。合唱団にも所属されており、制作したログドラムを合唱団で使うのも目的です。
そこからは形や表面を削り、それぞれの好みの表情に仕上げていきます。みんな、真剣で時間を忘れて没頭してしまいます。MFC事務局長、会員のKさんも夢中です。
もちろん私も。これはノミ跡をつけた仕上げにしたいと削りに没頭しているところ。
このような作業をみんなで夢中になって繰り返し、最初の二日間は朝から夕方まで、そして最終日は午前中だけの作業でしたが、参加した8名はそれぞれが3~4本のログドラムとバチを完成させました!
正直、朝が早過ぎるかな?と思っていた私でしたが、ログドラムに魅せられた皆さんは、二日目からは定刻前には倉庫にやってきて、待ちきれずにすぐに作業を始めるような状態でした。
こんなに時間があっという間に過ぎてしまうのかと、木彫に没頭し楽しんだ3日間でした。
そして最終日の午後は、出来上がったログドラムを全てアトリウムに運び込み、プロの和太鼓集団「志多ら」に所属していた奥山峰伸さんを講師に迎えたリズムワークショップです。
会場いっぱいにログドラムを並べていきます。
マイログドラムを持参した先生の奥山峰伸さん。演奏家の動きはかっこよく、響きがすばらしい!
会場にいた一般の方も巻き込んでの楽しいワークショップとなり、すばらしい響きがアトリウムに鳴り響きました。奥山さん、ありがとうございました。
ワークショップで制作したログドラムを自宅に運び、石川さんから教わったとおりにビニール袋をかけて保管していますが、袋の内側には水滴がびっしりとついています。たっぷりと水を吸い上げた木の生命力を感じます。石川さんによると、伐採直後の木のほうが柔らかくて作業がしやすく、また制作直後のログドラムは、木のスピリットを感じさせる霊的な響きがするのだそうです。これから半年くらいかけて木が乾燥していき、それとともに音も変化していきます。
モエレの空間とモエレの樹木から生まれた響きを交差させる試み、今回は初回で手探りの部分が多くありましたが、モエレの空間をより立体的にし、豊かな“情景”を加えるものだと感じました。
今後は全国に向けた丁寧な発信をし、首都圏などからも参加をしてもらえるようなワークショップに育てていきたいものだと思っています。(武市)
( 写真Ⓒ平島邦生 )